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松蔭先生の課外授業
No.014
東京都美術館 開館90周年記念展 木々との対話──再生をめぐる5つの風景 後編
ゲスト:アーティスト/倉田悟さん
松蔭浩之先生が都内の美術館で行う特別な授業。前回に引き続きユニークな油彩画を描く倉田悟さんをゲストに、東京都美術館で開催されている開館90周年記念展「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」を鑑賞。

松蔭浩之先生と倉田悟さんは、東京都美術館の「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」をどう見たのか? 前編と同様、同館学芸員の田村麗恵さんによるガイドで、二人は館内を巡った。

田村 こちらが、國安孝昌(くにやす・たかまさ)さんの新作《静かに行く人は、遠くへ行く。》です。

松蔭 いいタイトルですね。

田村 丸太約3500本、陶ブロック約5万個を使っていて、室内展示ではこれまでで最大級規模。ご本人としては集大成と考えている作品です。

倉田 5万個!

松蔭 数もすごいけど、きれいに組んでるのもすごい!

田村 陶ブロックの組み方は、少しくらい粗いほうが構造的な強度が増すそうです。3.11の時、國安さんの作品が茨城県の屋外で展示されていたんですが、一部のブロックが落ちただけで基本的には崩れませんでした。

松蔭 役に立つ建築でもないのに、1個1個、ブロックを積み上げ、丸太を組んでいく。しかも形態は単純。これこそ美術。

田村 國安さん自身は、「誰にでもできることで、誰にもできないことをする」とおっしゃってます。

松蔭 素晴らしい! そのとおり! それが美術の醍醐味だと思う。

國安孝昌《静かに行く人は、遠くへ行く。》2016年
撮影:松蔭浩之
國安孝昌《静かに行く人は、遠くへ行く。》2016年
撮影:松蔭浩之

そしてご一行は、舟越桂(ふなこし・かつら)さんの作品展示エリアへと足を運んだ。

松蔭 当時、甲田益也子(こうだ・みやこ)さんというモデルがいて、舟越さんの彫刻の顔とよく似てて。ほら、この作品はまったく甲田さん。

倉田 甲田さんをモデルにしてたんですかね?

松蔭 そのようによく言われていたね。

田村 あと、小雪さんも意識しているそうです。

松蔭 うん。要するに、洋風に見える和顔ってことでしょうね。

田村 こちらが最新作《海にとどく手》です。

倉田 メイクというか着色もきれいですね。

田村 通常、顔にはサンドペーパーをかけてつやつやにするのですが、今回の新作でははじめて、のみ跡を残しています。

松蔭 舟越さんは、木を彫る技法としては伝統的だけど、着色が独特で。

倉田 ここまでやるんだ、という感じがありますよね。

松蔭 エクストリーム感が確かにある。ぼくが学生の頃、舟越さんは大スターで、アート界だけでなくファッション界とかいろんなジャンルのクリエーターに強い影響力があった。で、いまの若い世代である倉田さんが「いっちゃってる感」を覚えるのは、まだまだ力が衰えていない証拠だと思う。

舟越桂《言葉をつかむ手》(部分)2004年
撮影:松蔭浩之
舟越桂《言葉をつかむ手》(部分)2004年
撮影:松蔭浩之

田村 「木々との対話」については以上です。どの作品も、目の当たりにしたときに得られる実感を重視して選びました。また、本展は、ギャラリーA・B・C以外の空間でも展示をしています。美術館の色々な場所を巡っていただき、作品を発見する楽しみも体感していただければ思います。

松蔭 ええ、展示室を越えて、ロビーや美術情報室、屋外に作品が展示されているところも面白い。

倉田 作品を探しながら美術館を探検しているみたいでしたね。

松蔭 作品はもちろんのこと、木の持つ強さや、はかなさに改めて気づかされた思いです。100周年記念展が楽しみになってきた!

それから、松蔭先生と倉田さんは「木々のアトリエ」へと向かった。8月3日〜9日(8日休室)の6日間限定の関連企画で、出品作家によるワークショップや公開制作、作品素材や制作プロセスなどの展示があった。

きぎラーA 私たちアート・コミュニケータが「きぎラー」というチームを結成し、お客さんのガイド役を務めています。木に鳥が巣をつくるアクセサリーが「きぎラー」の目印です。

松蔭     ほんとだ。みんな付けてる。

きぎラーB こちらは、田窪恭治さんの《感覚細胞─2016・イチョウ》で使ってる CORQ® コルク です。

松蔭     ほほぅ。イチョウの周りにあった CORQ® コルク ですね。

きぎラーB どうぞ、触っていいですよ。コルテン鋼でできたオリジナル・ブロックです。

鳥の巣をつけた「きぎラー」さん
撮影:松蔭浩之
鳥の巣をつけた「きぎラー」さん
撮影:松蔭浩之

倉田     写真をみると、外にある CORQ® コルク は腐食して、いい感じですね。

きぎラーB この素材、錆びるのは表面だけで、内部まで腐食しないんですよ。

きぎラーC こちらは、舟越桂さんの作品素材です。

倉田     これ、何という木ですか?

きぎラーC クスノキです。舟越さんはもっぱらクスノキを使うそうです。

倉田     あ、舟越さんが彫った木の破片もある! 木くずなのに価値が出そう。

松蔭     いやあ、出ないよ。

倉田     ほしい人はほしいと思いますよ。

木材サンプル(協力:岐阜県森林文化アカデミー)
撮影:松蔭浩之
木材サンプル(協力:岐阜県森林文化アカデミー)

松蔭     それにしてもこの展覧会、「木々のアトリエ」も含めてよくできている。作品の素材や制作過程を見せることで、作品への理解も深まるし。それに参加アーティストは、いろんな木の使い方をする人がバランスよく選ばれてる。世代も手法もばらばらで、そこがよかった。

舟越さんの作品の制作過程を紹介するコーナーにて

舟越さんの作品の制作過程を紹介するコーナーにて


構成:新川貴詩

開館90周年記念展「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」

「木と再生」をキーワードに、永遠と瞬間、生と死というアンビバレントな要素を複雑に包含する作品で構成する展覧会。木の素材を活かした大規模なインスタレーションや彫刻により、現代日本を代表する作家たちの世界を体感できます。
http://www.tobikan.jp/exhibition/h28_treesofllife.html

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。「瀬戸内国際芸術祭2016」に「昭和40年会」として出品。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

倉田悟(くらた・さとる)
1991年、東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。ベルリン芸術大学留学を経て、現在、武蔵野美術大学大学院油絵コースに在籍中。主なグループ展に「トーキョーワンダーウォール2015」(東京都現代美術館)など。2013年、「シェル美術賞2013」で審査員賞を受賞。
「TWS-Emerging 2016」の一環として個展「アジワルラの思い出」をトーキョーワンダーサイト渋谷にて開催(9月3日-10月2日)。
http://www.kuratasatoru.com/

TWS-Emerging 2016【第3期】
http://www.tokyo-ws.org/archive/2016/04/s0903.shtml

倉田悟(くらた・さとる)

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