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トーキョー・アートビジョン
No.026 見える世界を、記録・転写する
語り手:写真家 鷹野隆大(たかのりゅうだい)氏

身体とセクシュアリティの関わりに問題意識を持って作品を発表し続けている写真家、鷹野隆大さん。その被写体は、人物にとどまらず、街、公共空間、都市までが対象となっています。今回は、1998年から毎日撮り続けている日常風景のシリーズ〈毎日写真〉のお話とともに、撮影する行為、写真というメディアの今後、若手アーティストの方へのメッセージをいただきました。

シリーズ〈In My Room〉より 《赤い革のコートを着ている》 2002 type-C print (c)鷹野隆大/Takano, Ryudai Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon
シリーズ〈In My Room〉より 《赤い革のコートを着ている》 2002 type-C print
(c)鷹野隆大/Takano, Ryudai
Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon


50年後の日本人が共有できる写真

 ハレとケという言葉がありますが、写真をスタートさせたとき、写真はハレの日を撮るのではなく、ケを撮るべきと考えていたんです。ところが、身近な問題であったセクシュアリティという主題で、意識的にはどんどん日常に近づけてきたはずなのに、実際の撮影は特別な日にしかやらない。例えば〈ヨコたわるラフ〉シリーズで言うと、モデルは簡単に見つかるわけじゃないので、撮影する機会が少ないんですね。2、3ヶ月撮影しないことも平気であって。そうすると、撮影という行為がハレになってしまう。言っていることとやっていることが違うなと思って、〈毎日写真〉をスタートさせました。とにかく撮影という行為を日常に取り戻すために、1日1回はシャッターを押そうと。

 〈毎日写真〉にはもうひとつ、裏のテーマがあって、それは「50年後の日本人のために」というものです。これまで、ある種個人的な世界観みたいなものを表現してきたんですが、ここではみんなと共有できる記録っていうのをやっていきたいなあという思いもありました。50年後に自分の撮った写真が意味を帯びてくる、そういったものです。だから、東京タワーや渋谷など、みんなが共通して目にする場所も記録していこうと思ってるんです。とはいえ、実際は普段の生活のなかで出会った範囲内、出会い頭で撮ってるだけなんで、内容はまったく取り留めがないものです。だから、はじめは発表するつもりもなくて、僕が死んだ後に誰かが偶然に発見してくれたらいいなあという程度に考えていましたが、最近、少しずつお蔵出し状態で、先日も新宿高島屋の個展「花々し」で一部を発表してしまいました。基本的には、キレイな夕日とか、ちょっと気恥ずかしい写真も、見栄を張らずにバカになって撮ろうみたいな(笑)、そんなシリーズです。

シリーズ〈毎日写真〉より 《'07.06.01》 2007 type-C print (c)鷹野隆大/Takano, Ryudai Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon
シリーズ〈毎日写真〉より 《'07.06.01》 2007 type-C print
(c)鷹野隆大/Takano, Ryudai
Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon


デジタル技術が写真にもたらした影響

 最近、「街で知らない人を写しちゃっていいんですか」と質問されることが時々あって、撮る段階で自主規制することに驚きました。確かに、知らない人を問答無用で写すのは失礼だけど、撮りたいと思ったら撮る。発表するかどうかは別問題です。公共空間で自主規制するのが当たり前になると、ある種の記録がどんどん消えていって、歴史の改ざんがしやすい状況が起きてしまいます。悪意がないにもかかわらず撮影する行為がけしからんという世の中になっていくのは、ひとつの危険な方向ですよね。でもこれは、インターネットが普及して、誰でも大量に画像を流布できることが、影響しているんでしょう。難しい世の中になったと思います。

 僕は、デジカメは持ってないんです。フィルムで撮ることに慣れているからというのもありますが、フィルムって決定打。シャッターを押したら二度と消去できません。デジカメは簡単に消せるし、やり直しがききますよね。もうひとつ、デジカメはパソコンを通して再現するじゃないですか。このパソコンがクセ者で、いまでは多くの人がパソコン上で写真の加工を経験してますよね。最初はちょっとゴミを取ろうからはじまって、ほくろを、顔のしわを、さらには細く見えるようにと、加工が止まらない。これはもう絵です。だったら最初から絵を描けばいいのに、そうしないのは、写真を使うことでこれが真実だって認識させたいんです。セルフイメージに対するこだわりがもの凄く強くなっていますし、もしかするとあるがままの姿を受け入れられない、許容できない社会になりつつある気もします。いろいろな意味で怖いですね。

シリーズ〈毎日写真〉より 《'04.10.12》 2004 type-C print (c)鷹野隆大/Takano, Ryudai Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon
シリーズ〈毎日写真〉より 《'04.10.12》 2004 type-C print
(c)鷹野隆大/Takano, Ryudai
Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon

創作活動、発表を続けるということ

 これからナディッフでの個展、府中市美術館での公開制作と新作を発表していきますが、写真をはじめたころから発表する機会を大切にしたいと考えていました。人に伝えたいという思いがあるので、自分で撮ってそれで満足っていうわけではありません。例えば2000年にVOCA展に出品した当時はまるで反応はなかったんですが、いまになって「見たよ」と言う人が出てきたりして、やっぱりいろんな人が見てくれていて、次につながっているなと感じてます。

 とはいえ、制作を続けて行くのは大変で、生活はいつもぎりぎりの超低空飛行。はっきり言って、売れない作品はゴミなんです。評価されなかったら、ゴミの山がどんどん増えていくんです。僕なんか、頼まれもしないのに毎日写真を撮っているわけで、そんなことを10年も続けていると、部屋はどんどん埋もれていくし、かけたお金と労力はもはや取り返しのつかない量になっています。「こんなゴミの山、資源の無駄使い」といまでも時々思いますが(笑)、後悔する気持ちにはなれません。どうせ一度は死ぬんです。最後の最期に「ああすればよかった」と思いたくないじゃないですか。すでに僕の人生は間違いだらけなので、偉そうなことを言える身分じゃありませんが、うまくいってもいかなくても、みなさんには後悔しない人生を送ってほしいですね。

シリーズ〈おれと〉より《with AA》(部分)2008 type-C print (c)鷹野隆大/Takano, Ryudai Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon
シリーズ〈おれと〉より《with AA》(部分)2008 type-C print
(c)鷹野隆大/Takano, Ryudai
Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon

information

■鷹野隆大 個展 おれと
肌の色合わせのために、作家がモデルと一緒に裸になって撮影した写真を展示。同時期に写真集の刊行も予定している。

会期: 2009年4月28日(火)〜6月9日(火)12:00〜20:00
会場: NADiff a/p/a/r/t(JR恵比寿駅東口出口より徒歩6分)

■公開制作 記録と記憶とあと何か
会期中、作家自身が街に出てスナップ写真を撮影しプリントするという、モノクロ作品の制作過程を公開。また、ワークショップ、アーティストトークなどの参加プログラムも行う予定。

会期: 2009年5月23日(土)〜7月20日(月)10:00〜17:00
会場: 府中市美術館
(京王線府中駅、京王線東府中駅北口、JR中央線武蔵小金井駅よりバス)

※休館日、他詳細は各会場の公式ホームページ、または下記よりご確認ください。
ユミコチバアソシエイツ
http://www.ycassociates.co.jp

次回は…
「美女採集」など写真に刺繍を施す手法で、雑誌の連載、広告からアート作品まで手がけている清川あさみさんをインタビュー。7月からはじまる展覧会(東京都庭園美術館、水戸芸術館)への出品作、創作のテーマなどについてお話しいただきます。[6月25日(木)アップ予定]

 
鷹野隆大(たかのりゅうだい) 写真
 
鷹野隆大
(たかのりゅうだい)

1963年、福井市生まれ。1987年、早稲田大学政治経済学部卒。写真家。大学在学中より制作をはじめ、1994年から都内のギャラリーで個展を開催。2006年、第31回木村伊兵衛写真賞受賞(受賞作『In My Room』2005)。セクシュアリティや身体イメージをテーマにした作品〈ヨコたわるラフ〉〈男の乗り方〉〈ぱらぱら〉に加え、日常風景を撮影した〈毎日写真〉シリーズなどを発表している。2008年、「液晶絵画Still/Motion」(東京都写真美術館)では、映像作品を展示。作品は、国内にとどまらず海外でも展観されている。2009年7月20日(月)まで、府中市美術館にて「公開制作 記録と記憶とあと何か」が開催される。

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